あなたのサービスはなぜ売れない?個人事業主のための顧客起点マーケティング

作成者: ムー|Aug 19, 2025 2:40:36 PM

あなたのサービスはなぜ売れない?個人事業主のための顧客起点マーケティング

個人事業主やスモールビジネス事業者として事業を始める際、多くの人が「自分のやりたいこと」や「提供したいサービス」からスタートします。その情熱は、事業を推進する上で欠かせないエネルギー源です。しかし、その情熱だけでは、ビジネスを軌道に乗せることは難しいのが現実です。

なぜなら、事業とは「顧客の課題を解決し、その対価をいただく」ことで初めて成立するからです。

この記事では、あなたの貴重な時間と労力を無駄にしないため、事業の土台を固める「顧客起点マーケティング」の考え方と、その具体的な実践方法を解説します。最初にこの思考をインストールすることで、遠回りを防ぎ、着実に事業を軌道に乗せていきましょう。

なぜ、あなたの素晴らしいサービスは売れないのか?

「これだけ良いものなのだから、きっと売れるはずだ」そう信じてサービスをローンチしたにもかかわらず、全く手応えがない。これは多くの個人事業主やフリーランスが経験する壁です。その原因は、事業の出発点にあるのかもしれません。

「プロダクトアウト」と「マーケットイン」:バランスの取れた視点を持とう

事業の考え方には、大きく分けて2つのアプローチがあります。

  • プロダクトアウト(作り手目線)
    自分のスキルや作りたいものを起点に、「こんな良いものができたので、どうですか?」と市場に問いかける考え方です。情熱を形にしやすい反面、それが市場のニーズと合致しない場合、独りよがりなサービスになりがちです。
  • マーケットイン(顧客目線)
    「顧客は何に困っているのか?」を起点に、その課題を解決するためのサービスを考えるアプローチです。

個人事業主は、自身の専門性からプロダクトアウトに偏りがちですが、大切なのは両方のバランスです。あなたの素晴らしいスキルや情熱(プロダクトアウト)を、顧客が本当に求める形(マーケットイン)で提供することが、事業の成否を分けます。結局のところ、事業の価値は、商品の質だけでなく「顧客の悩みを解決できるか」で決まるのです。

顧客の「本当の悩み」を見抜く、たった一つの方法

では、どうすれば顧客の悩みを理解できるのでしょうか。その答えは、あなたの頭の中にはありません。

顧客インサイトの重要性:顧客自身も気づいていない「本当の悩み」を見つけ出す

多くの事業者が「自分はこれに悩んでいる」といった経験や想像から顧客の悩みを定義しようとしますが、これは非常に危険です。あなたの経験は、市場全体から見ればごく一部の偏ったサンプルに過ぎません。

ここで重要なのが、顧客インサイト、つまり顧客自身も明確には言葉にできていない、行動の裏にある本音や欲求を見つけ出すことです。そして、そのスタート地点は「自分も顧客も、まだ本当のペイン(悩み)が分かっていない」という認識を持つことです。この謙虚な姿勢が、思い込みを排除し、真のニーズを探る第一歩となります。

顧客の本音を引き出す「デプスインタビュー」

顧客インサイトを発見するための最も確実な方法は、たった一つ。それは、顧客候補に直接、深く話を聞くこと(デプスインタビュー)です。アンケートのような定量調査では見えてこない、個人の価値観や感情、具体的なエピソードの中にこそ、事業のヒントとなるペインが隠れています。顧客のリアルな言葉に耳を傾けることで、あなたの想像を超えた課題が見えてくるはずです。

その悩み、市場は存在する?「量と頻度」で客観視する

インタビューで深い悩みが見つかったとしても、それがごく一部の人の特殊な悩みであれば、事業として成立させるのは困難です。そこで、主観的な発見を客観的な事実に変えるために、「量と頻度」という視点を持ちましょう。

  • 量:そのペインは「どれくらいの人が」感じているか?
  • 頻度:そのペインは「どれくらいの頻度で」感じているか?

この2つの問いを考えることで、その悩みが単なる思いつきではなく、市場性のある事業の種であるかを見極めることができます。

もうブレない!事業の軸となる「ペルソナシート」の作り方

デプスインタビューを通して顧客の解像度が上がっても、日々の業務に追われるうちに、その人物像は徐々に薄れ、発信するメッセージがズレてきてしまうことがあります。そうならないために、事業の軸となる「ペルソナシート」を作成しましょう。

ペルソナシートが一つあれば、発信はズレない

ペルソナとは、あなたのサービスを最も届けたい、たった一人の理想の顧客像のことです。この人物像を言語化し、一枚のシートにまとめておくことで、HPやLP、SNSのコンテンツを作成する際に「この人ならどう思うか?」という明確な基準ができます。結果として、すべての施策に一貫性が生まれ、顧客からの信頼につながります。大切なのは、最初に言語化し、それを都度見返す習慣を作っておくことです。

必ず含めるべき3つの情報

ペルソナシートに決まった型はありませんが、以下の3つの情報は必ず網羅しましょう。

  • デモグラフィック情報:年齢、性別、職業、居住地など、客観的な属性
  • サイコグラフィック情報:価値観、ライフスタイル、趣味嗜好、情報収集の方法など
  • 一番のペイン(悩み):この事業で解決したい、最も深く、具体的な悩み

ペルソナに「命を吹き込む」擬人化のコツ

ペルソナシートは、単なる情報の羅列ではありません。抽象的なターゲットを、顔が見える「〇〇さん」へと擬人化することが重要です。

例えば、「30代女性、都内在住、IT企業勤務」というターゲット情報だけでは、どんなメッセージを届ければ良いか分かりません。しかし、「佐藤優子さん、32歳。仕事は楽しいが、将来のキャリアに漠然とした不安を感じている。休日は友人とカフェ巡りをするのが好きで、Instagramで情報収集している」といった具体的な人物像があれば、「この人ならどんな言葉に心を動かされるだろう?」と、メッセージの解像度が格段に上がります。

まとめ

この記事では、個人事業主が事業の土台を固めるための「顧客起点マーケティング」について解説しました。

  • 事業は「やりたいこと(プロダクトアウト)」と「顧客の悩み(マーケットイン)」のバランスで考える
  • 顧客の本当の悩みは、思い込みを捨て「デプスインタビュー」でしか見つからない
  • 見つけた顧客像を「ペルソナシート」に言語化し、事業の軸にする

あなたの情熱とスキルを、それを本当に必要としている顧客に届けるために、まずは一人の顧客候補にじっくりと話を聞くことから始めてみませんか。その一歩が、あなたのビジネスを軌道に乗せる最も確実な道筋となるはずです。

 

Sen Murata (ワンアンドマーケティングシニアパートナー)

広告業界で約10年間、マーケティング戦略立案から施策実行に従事。電通でストラテジックプランナーとして幅広い業種のコミュニケーション戦略を担当。富士通でデジタルマーケティングコンサルタントとして、データ分析を活用した顧客企業の売上拡大を支援。現在は大手化粧品会社でデジタル領域を中心としたブランドのマーケティングを担当している。

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