分業しない「THE MODEL」入門:個人事業主がビジネスを成長させるプロセス思考

作成者: ムー|Jul 25, 2025 5:41:24 AM

分業しない「THE MODEL」入門:個人事業主がビジネスを成長させるプロセス思考

「毎月の売上が不安定」「新規顧客の獲得が場当たり的」といった悩みは、多くの個人事業主やフリーランスの方が抱える共通の課題です。

こうした状況から抜け出し、ビジネスを安定させるための考え方の一つに、「THE MODEL(ザ・モデル)」というフレームワークがあります。

「THE MODEL」は、もともと大企業向けの分業の仕組みです。そのため、「個人事業主には関係ない」と思われがちですが、そんなことはありません。このモデルの根本的な考え方には、個人の事業を成長させるヒントがたくさん詰まっています。

この記事では、THE MODELの考え方を個人事業主のビジネスに応用するための、現実的なアプローチをわかりやすく解説します。

THE MODELとは?

THE MODELを実践する前に、まずはその基本となる考え方を理解しておきましょう。

そもそも「THE MODEL」とは?

THE MODELとは、もともとSalesforce社が提唱した、顧客が商品やサービスを知り、購入し、継続して利用するまでの一連の流れを、4つの専門的な役割に分担して考えるアプローチです。各段階で最適な対応を行うことで、プロセス全体を効率化し、売上を最大化することを目指します。

その4つの役割とは以下の通りです。

マーケティング (Marketing)

Webサイトや広告、イベントなどを通じて、自社の商品やサービスに興味を持つ可能性のある見込み客を集めます。

インサイドセールス (Inside Sales)

電話やメールで見込み客と接点を持ち、関係性を築きながら具体的な商談の機会を作り出します。

フィールドセールス (Field Sales)

商談に進んだ見込み客に対し、具体的な提案を行い、契約を締結します。

カスタマーサクセス (Customer Success)

契約後の顧客を支援し、サービスを最大限活用してもらうことで満足度を高め、契約の継続や追加の提案に繋げます。

このように、THE MODELは組織的な「分業」を前提としたフレームワークですが、この考え方の「本質」を抜き出せば、一人でも十分に実践できます。

なぜTHE MODELは評価されるのか?

THE MODELが世界中の企業から評価されているのには、いくつかの重要な理由があります。

まず、役割ごとに数値を計測することで、ビジネスの課題が明確になります。 「マーケティング」から「契約」、そして「契約継続」まで、プロセスのどこにボトルネックがあるのかを客観的なデータで把握できるため、「なぜかうまくいかない」という漠然とした悩みから解放されます。

そして最も重要なのが、ビジネスのゴールを「購入」という短期的な点から、「顧客生涯価値(LTV)」という長期的な線へと転換させる点です。LTVとは、一人の顧客があなたのビジネスに生涯を通じてどれだけの価値をもたらしてくれるかを示す指標です。このLTVを最大化する視点こそが、事業の安定と持続的な成長を実現します。

「数値による課題の可視化」そして「LTVを最大化するゴール設定」。これらの観点から、THE MODELは単なる営業手法にとどまらない、強力なビジネスフレームワークとして世界中から評価されているのです。

個人事業主に活かせるTHE MODEL

THE MODELの基本的な考え方を、どのようにして一人のビジネスに応用するのか。ここでは、具体的な方法論を解説します。

4つの役割を一人で切り替える

THE MODELの考え方を実践するための第一歩は、あなたの中に4つの専門部署を設置するようなイメージを持つことです。日々の業務をこの4つの役割のどれかに分類し、意識的に頭を切り替えていきましょう。

マーケティング担当の自分(知ってもらう)

あなたのサービスや専門性に興味を持つ可能性のある「見込み客(リード)」を集める役割です。ブログやSNSでの情報発信、Webサイトの運営などを通じて、まだあなたを知らない人にアプローチします。

インサイドセールス担当の自分(関係を育てる)

獲得した見込み客と接点を持ち、信頼関係を築きながら、具体的なニーズを引き出す役割です。メルマガの配信や個別メッセージでのフォローアップを行い、相手が「もっと話を聞いてみたい」と思う状態へと導きます。

フィールドセールス担当の自分(契約する)

ニーズが明確になった見込み客に対して、具体的なサービスを提案し、契約を締結する役割です。オンラインでの打ち合わせや提案書の作成、クロージング活動に集中します。

カスタマーサクセス担当の自分(ファンになってもらう)

契約後の顧客をサポートし、サービスの価値を最大限に実感してもらう役割です。期待を超える成果を提供することで、顧客満足度を高め、継続利用(リピート)や新たな顧客の紹介に繋げます。

時間配分による役割分担モデル

4つの役割を理解したら、次に行動に移します。「一人で全てを同時並行」の状態から抜け出すために、効果的なのが時間による役割の分担です。カレンダーに「今はマーケティングの時間」「この午後はセールスの時間」と予定をブロックすることで、脳のスイッチを切り替え、各業務の生産性を高めます。

<週40時間稼働の場合の配分例>

  • フィールドセールス: 40%(16時間)
  • インサイドセールス: 25%(10時間)
  • マーケティング: 20%(8時間)
  • カスタマーサクセス: 15%(6時間)

例えば、「月曜の午前中はブログ執筆(マーケティング)に集中し、火曜と水曜の午後は商談(フィールドセールス)の時間に充てる」というように、ご自身の業務に合わせてスケジュールを組むのがコツです。このように意識的に役割を切り替える、いわば「複数の人格」を持つことが、個人事業主が計画的にビジネスを成長させる上では欠かせません。

THE MODELを導入する上で一番重要なこと

役割を分け、時間を区切っても、活動が正しく行われているかを評価できなければ、改善のしようがありません。THE MODEL導入の成功の鍵は「計測」にあります。

プロセスの可視化と計測

THE MODELの大きな特徴の一つは、営業プロセス全体を数値化し、可視化することです。これまでの属人的な営業活動では、成果が出ない原因がどこにあるのかを特定するのは困難でした。「今月はなぜか売上が悪い」といった、漠然とした問題認識に留まりがちです。

しかし、THE MODELでは各ステージの移行率(例:リードから商談への転換率)などをKPIとして設定し、データを継続的に追跡します。これにより、プロセスの中でどこがボトルネックになっているのかを客観的に把握できます。例えば、「Webサイトへのアクセスは多いのに、問い合わせが少ない」「商談数は多いのに、成約率が低い」といった具体的な問題点が明確になり、的を絞った改善策を考えられるようになります。

これにより、個人事業主は「勘」や「経験」に頼った活動から抜け出し、データに基づいた再現性のある改善サイクルを回せるようになります。

各段階で追うべき重要KPI

この「可視化と計測」を実践するため、各役割で追いかけるべき具体的な数値目標(KPI)を設定しましょう。

マーケティング

月間新規リード数、リード獲得単価(CAC)

インサイドセールス

アポイント獲得率(アプローチした見込み客のうち、商談に至った割合)、月間商談獲得数

フィールドセールス

受注率(商談のうち、契約に至った割合)、平均受注単価

カスタマーサクセス

顧客満足度、契約継続率、顧客生涯価値(LTV)

最初から高い目標を掲げる必要はありません。まずは「月間リード獲得: 10件」「受注率: 20%」のように、現実的な数字を目指し、PDCAサイクルを回していくことが重要です。

【まとめ】4つの人格を使いこなし、ビジネスを仕組み化する

今や中小企業から大企業まで、規模を問わず多くの企業がTHE MODELの考え方を取り入れています。しかし、その有効性を知りながら、個人事業主レベルで実践している人はまだごくわずかです。この知識は、あなたにとって大きなアドバンテージになり得ます。

「分ければ、分かる」

この記事で一貫してお伝えしてきたのは、このシンプルな原則です。一人の頭の中でごちゃ混ぜになっている仕事を、「集客」「育成」「契約」「維持」という4つの役割(人格)に分ける。たったそれだけで、今まで見えなかった課題や、次にとるべき行動が驚くほど明確になります。

そうやって4つの人格を意識的に使い分け、それぞれの施策を計画的に実行していくこと。それこそが、不安定な「点」の活動から抜け出し、あなたのビジネスを持続可能な「線」へと変える、最も確実な方法です。

もし、この記事を読んで「自分のビジネスにどう応用すればいいか分からない」「一度専門家の意見を聞いてみたい」と感じた方は、ぜひ無料カウンセリングをご活用ください。あなたのビジネスに合わせた、より具体的なアドバイスをさせていただきます。

 

Sen Murata (ワンアンドマーケティングシニアパートナー)

広告業界で約10年間、マーケティング戦略立案から施策実行に従事。電通でストラテジックプランナーとして幅広い業種のコミュニケーション戦略を担当。富士通でデジタルマーケティングコンサルタントとして、データ分析を活用した顧客企業の売上拡大を支援。現在は大手化粧品会社でデジタル領域を中心としたブランドのマーケティングを担当している。

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