はじめに:事業の健康状態、把握できていますか?
「あなたの今月の成約数(受注数)の目標は何件ですか?そして、現時点での達成率は何%でしょう?」
この質問にすぐに答えられないなら、要注意です。個人事業主の方々は、日々の業務に追われるあまり、数値を基にした定量的な判断ではなく、感覚に頼った定性的な判断で経営をしがちです。その状態では、事業を安定させ、成長させることは難しいでしょう。
この記事では、事業の安定と成長の土台となる「予実管理」の重要性と、誰でも簡単に始められる実践的な方法を解説します。
予実管理とは?事業の「目標」と「現状」を数値で見ること
では、予実管理とは一体何でしょうか。
難しく考える必要はありません。予実管理とは、シンプルに言えば事業の「目標」を立て、それと「実績」を比較・管理することです。
この2つの数値を明確にすることで、「次にどんな施策を打つべきか」「目標達成までどれくらいか」を客観的に判断でき、迷いなく事業を進められるようになります。
なぜ予実管理は事業に不可欠なのか?2つの理由
「なんとなく売上は上がっているから大丈夫」「忙しく働いているから問題ない」と感じるかもしれません。しかし、そこに落とし穴があります。
感覚経営の問題点
感覚に頼ることは楽かもしれません。なぜなら、何かを「やった気」になれるからです。しかし、その行動が目標という然るべき方向に向かっていなければ、残念ながら大きな成果には繋がりません。予実管理が不可欠な理由は、この「やった気」の経営から脱却するためにあります。
理由1:目的地(目標)がなければ、改善の方向がわからない
売上や利益、成約数など、明確なゴールがあるからこそ、日々の活動に意味が生まれます。ゴールがなければ、今やっていることが正しいのか、何を改善すべきなのか、判断のしようがありません。全ての事業活動は、目標を達成するためにあるべきです。
理由2:現在地(実績)がわからなければ、最適な打ち手が見つからない
たとえ目標があっても、現状を正しく把握していなければ意味がありません。目標に対して進んでいるのか、遅れているのか。それを知ることで、初めて「次はこうしよう」という具体的な一手が見えてきます。事業を数値で捉えることで、例えば「問い合わせはあるが受注が少ないから、営業資料を改善しよう」といったように、課題の特定と次の一手をセットで考えられるようになります。
つまり予実管理とは、「予」でゴールを定め、「実」で現在地を確かめる、事業運営の土台となる活動なのです。
【実践編】Googleスプレッドシートで始める、シンプルな予実管理
「予実管理は大切そうだけど、難しそう…」と感じるかもしれませんが、ご安心ください。高機能な専門ツールもありますが、個人事業主ならまずは無料で使え、柔軟性も高いGoogleスプレッドシートが最適です。
具体的な作成手順はたったの3ステップです。
1. 重要指標(KPI)を定める
まず、ご自身の事業にとって最も重要な数値指標(KPI)を決めます。「新規契約数」「問い合わせ数」「売上高」など、事業の成長に直結する指標を選びましょう。
【職種別】KPI設定の例
ご自身の事業に合わせて、以下のような指標を設定してみましょう。
Webライターの場合
- 記事経由の問い合わせ数
- 文字単価/記事単価
- 新規クライアント獲得数
- 既存クライアントからの継続率
コンサルタントの場合
- 新規相談件数
- 契約獲得数(成約率)
- クライアント単価
- セミナーからの個別相談申込数
Webデザイナーの場合
- 新規問い合わせ数
- 受注件数
- 平均受注単価
- リピート受注率
2. 行と列を設定する
次に、スプレッドシートの行と列を設定します。
- 行(縦軸): ステップ1で決めた重要指標(例:新規契約数、問い合わせ数、売上高)を入れます。
- 列(横軸): 時間軸を入れます。ご自身のサービスや商品に合わせて「月次」「週次」「日次」などを決め、日付や期間を入れましょう。
3. 数値を入力し、自動化する
あとは、行と列がクロスする部分に目標や実績の数値を入れていくだけです。例えば「達成率」の欄には =C2/B2
のような数式を入れ、表示形式をパーセントに設定しておけば、実績を入力するたびに自動で計算してくれます。こうして自動化しておくと、管理がぐっと楽になります。
まとめ:感覚を「確信」に変え、事業を成長させよう
事業運営において、予実管理はまさに「一丁目一番地」です。まず現状を正しく把握し、そこから初めて「次に何をすべきか」という施策を考えるフェーズに移ります。
予実管理は、感覚や経験則といった曖昧なものを、客観的な数値という「確信」に変えるための強力なツールなのです。
まずは本稿を参考に、あなただけのシンプルな予実管理表を作ってみてください。数字で事業を語れるようになったとき、あなたのビジネスは間違いなく次のステージへと進んでいるはずです。