起業や新規事業を始める際、多くの方が「まず商品を作ってから営業やマーケティング活動をしよう」と考えます。しかし、筆者は「営業資料から作る」というアプローチを取るべきだと考えます。本記事では、なぜ営業資料から始めるべきなのか、そして具体的にどう作るのかを解説します。
なぜ営業資料から作るべきなのか?3つの理由
1. バケツの穴を塞ぐ
ビジネスにおける「バケツの穴」の比喩をご存知でしょうか。「水」はお客様、「バケツ」は売れる仕組みを表します。どんなに多くのお客様を集めても、販売の仕組み(バケツ)に穴が開いていれば、興味を持ってくれたお客様の行き先がなくなり、購入につながらずに離れていってしまいます。
事業立ち上げのフェーズではどうしても「SNSでの発信」や「サービスの設計」などわかりやすいものに目が行ってしまいますが、購入に一番近い部分から設計することが無駄のない効率的な進め方です。
2. サービスの解像度が高まる
営業資料を作る過程で「なぜ顧客はあなたのサービスを選ぶべきなのか?」という問いに答える必要があります。この過程で、競合との違いや自社の強みが明確になり、サービス自体が洗練されていきます。
特に事業立ち上げの段階では、サービスやビジネスモデルが曖昧であることが多いです。営業資料を作る過程で、自分の提供したいサービスの解像度を高めていきましょう。
3. 他のコンテンツにリサイクルできる
営業資料は全てのコンテンツの濃厚な原液となります。作成した営業資料の内容は、ウェブサイト、ブログ記事、SNS投稿など、あらゆるマーケティング活動にリサイクルできます。特にホームページやランディングページにおいては、営業資料が完成すれば、ウェブサイトやランディングページは完成したようなものです。
営業資料の作り方:5つのステップ
ステップ1:ペルソナをイメージする
あなたが悩みを解決したい理想の顧客像(ペルソナ)を1人、できるだけ詳細に設定します。名前をつけ、その人物像を鮮明にイメージできるまで言語化してみましょう。
書き下ろすべき項目
- 基本情報(年齢、性別、職業、役職)
- 現在抱えている悩みや課題(できるだけ具体的に)
- 理想の状態(どうなりたいか)
- 情報収集の方法(どこで情報を得るか)
例:「山田太郎さん(35歳)、IT企業の営業部長。部下のマネジメントに悩んでおり、特に若手の育成がうまくいかない。理想は部下が自発的に動くチームを作ること。ビジネス書やセミナーで情報収集している。」
ステップ2:ソリューションを考える
ステップ1で設定したペルソナの悩みを解決できるソリューション(サービスや商品)を考えます。重要なのは、あなたが提供したいものとペルソナが本当に必要としているものが重なる部分を見つけることです。
検討すべきポイント
- ペルソナの悩みの根本原因は何か
- その原因を解決する方法は何か
- あなたが提供できる解決策は何か
ステップ3:なぜその商品を購入すべきなのか考える
ペルソナがあなたのサービスや商品を購入する理由を言語化していきましょう。
整理すべき3つの要素
1. 他のサービスとの違い
- 競合にはない独自の機能や特徴
- 提供方法の違い(対面/オンライン、期間、頻度など)
- 価格面での優位性
2. サービスの特徴
- 具体的な内容や仕組み
- 実績や成功事例
- 保証やサポート体制
3. 強み
- 自社だからこそ提供できる価値
- 専門性や経験
- 顧客からの評価
ステップ4:コンバージョンを考える
コンバージョンとは、ウェブサイトや営業資料を通じて、顧客に取ってほしい最終的な行動を指します。短絡的に考えると「購入」のみになってしまいますが、サービスに応じてハードルを低くするなど工夫して設定してみましょう。
コンバージョンの例
- 購入:今すぐ商品を買ってもらう
- 体験:無料体験セッションに申し込んでもらう
- 試用:無料トライアルを開始してもらう
- 相談:個別相談会に参加してもらう
- 資料請求:詳細資料をダウンロードしてもらう
ステップ5:どの順番で伝えたらペルソナがコンバージョンしやすいか考える
ペルソナの心理状態を考慮し、最も行動につながりやすい情報の配置を設計します。ターゲットが企業か顧客か、サービスの分かりやすさなどに応じて最適な順番は変わります。
スライドの構成例
- 共感を生む導入
「こんな悩みはありませんか?」(ペルソナの課題を提示) - 解決策の提示
「その悩み、〇〇で解決できます」(ソリューションの紹介) - 信頼性の構築
実績、お客様の声、具体的な成果 - 差別化の明確化
なぜ他社ではなく自社なのか - 行動への後押し
期間限定特典、リスクの排除(返金保証など) - 明確なCTA
具体的な申込方法、連絡先
まずは80点の営業資料を作ってスタートしよう
ここまで営業資料の作り方を解説してきましたが、最後に最も重要なことをお伝えします。それは「完璧を求めすぎない」ということです。
多くの事業主が営業資料作成で立ち止まってしまう理由は、100点満点の資料を作ろうとするからです。しかし、実際のビジネスでは、80点の営業資料でも十分にスタートできます。むしろ、早く市場に出して顧客の反応を見ることの方が重要です。
営業資料は「生きた文書」として、顧客との対話を通じて進化させていくものです。実際に使ってみると、思わぬところで顧客が反応したり、逆に自信があった部分がスルーされたりすることがあります。これらの貴重なフィードバックを基に、営業資料をブラッシュアップしていけばよいのです。
まずは、スピード感を持って事業を進めていきましょう。